スイーツな日々。小麦粉が好きな奥さんと中間管理職の私

「あ、いいな!」のスイーツ情報。 カスタードクリームは友達です。

30年前のホワイトデー。もらってくれてありがとう。

今週のお題「ホワイトデー」



あれは小学3年生のホワイトデー前日。
明日に迫った準備のため、私はアタフタしていた。
チョコのお返し準備をしているのだが、ちょっと事情が違う。

というのも、担任の先生がお節介焼きの人だった。
「チョコをもらえない男子がいると可哀そうだから」と思うが、バレンタインを「クラス女子全員が男子全員にチョコをあげる」イベントにしてしまったのだ。
だから当日は女子全員が一旦先生に預けて、先生経由で男子一人ひとりに渡していくスタイル。

チョコを集めて大きな箱に入れて、番号順に呼ばれた男子が黒板前にいってもらう感じ。
言ってみればテストの答案用紙をもらうアノ風景、チョコレートバージョン。

そんなわけでホワイトデーの準備をしなければいけない。

私:「母ちゃん、ホワイトデー買って欲しいんだけど」
母:「あー、んだね。もらったんだもんね」

私:「なにか買ってくるから」
母:「いいよ、これにチョコを入れてあげるから」


私が見たのは、子供の手のひらに収まる舟形のプラスチック容器。
色は深い緑色。
私は知っている。これは法事や町内の会合で、大人たちが食べる御膳に乗っている簡易容器。
大人が好きそうな、酢の物や、一品料理をのせるヤツだ。
御膳はそのまま持って帰ってもいいように、プラスチックを多用しているのだ。
舟形はよく使われる容器の一種で幼いながらも「渋い容器だな」と感じていた。

私:「えっ!? これって料理に使っていた容器だよ。なんかカッコ悪いよ」
母:「カッコ悪くないよ。舟の形してるし、サイズもちょうどいいべ?」

私:「やだやだー。なんていうか、とにかく買ったものがいいんだー」
母:「なんで?家にあるのでいいべ。だいじょうぶだ。準備してあげるから」


そう言って母ちゃんは、一個づつ透明フィルムに包みされたキューブ型のチョコレートを舟に載せていく。
だいたい、6.7個くらい。舟がこんもりと山盛りになる感じに。
そして、それを家のラップで舟ごとグルグル巻きにする。

超ダサい。。。
子供ながらも「これはヤバい。こんなの明日先生に渡してクラスみんながいる中で知らない女の子に渡させたらメッチャ恥ずかしい・・・」
そう思った私は必死に母ちゃんに抵抗するものの、逆に母ちゃんは、

「あら!なんかいいな。これは喜ばれるなー」


私は「そんなわけないじゃん、とにかくスーパーとかで何か買ってよー」と必死に説得。

そんな心配をよそに母ちゃんは着々と完成させていく。
そして出来上がり、嫌がる私に半ば強制的に持たせるのだった。


ホワイトデー当日。
市販のクッキーやキャンディー、中にはおそらく母親と一緒に作ったのだろう、と思われるオシャレな手作り焼菓子など、皆レベルは一定基準をクリアしていた。
私を除いては。。。

一人ひとり、前に出ていって先生に渡すのだが、私が先生に舟型容器を渡した瞬間、それまで業務的に受け取っていた先生が、「んっ・・・!おろっ? ん?」とよく分からない言葉を発していたのを今でも覚えている。

私も心の中では「そうだよね、私も同じ気持ちです。そして先生、私を見ないで」と叫び、そそくさと席に戻った。


そしてホワイトデーお返しイベントが始まった。
事前に番号札をもった女子と、箱にはいったホワイトデーを出していくビンゴ式。
まずは先生が箱から物を取り出す。
大きな物やオシャレな物だと、女子たちが一斉に「あー。これがいいなー。何番?何番?」と騒ぎだす。

そして、ついに私のが出た。
一瞬だけ止まる教室。
多くの子供はおそらく目にしたこともない、舟形容器とその荷台にのったキューブ型のチョコレート。
「そりゃそうだ、大人にならないと中々みないよね、この舟形容器。てか、なんだよ、舟形容器って・・・!」と心の中で泣きながら、早く時間が過ぎるのを待っていた。

正直、そこからの記憶はない。

覚えているのは、私のをもらってくれた女の子が静かに席に戻っていく姿だ。


大人になった今、あれはあれで面白話として私の中でもギリ消化しきれているが、もらってくれた女の子はどういう気持ちだったのか気になる。

そんな複雑な気持ちを酒のアテにしながら、大好きな酢の物をいただく。